2017年1月8日日曜日

トラウマが対人関係に与える影響

こんにちは、心理療法士の加藤絢子です❢


皆さん、七草粥は召し上がりましたか?

我が家は、一年の無病息災を願って1月7日の朝、家族そろって食べました。





今回のブログは、「対人過敏」についてお話しをしたいと思います。




対人過敏


PTSDの症状から起こる対人機能の障害を
対人過敏」と呼んでいます。

トラウマのない人であれば、相手の言動に多少の違和感があったとしても「少し様子を見る」ということをするでしょう。

相手に質問してみたり、いろいろな角度から考えてみたりするものです。

もしも本当に怪しいことだとしても、「まぁ、あまり関係が近い人ではないから気にしないようにしよう」などと相対的な位置づけを考えたりします。

しかし、「対人過敏」が刺激されてしまうと、少しでも「怪しい」と思えばすぐに「脅威のセンサー」が作動してしまい、「少し様子を見る」などということができなくなってしまいます。

また、センサーが作動すると、とにかく脅威を排除しようとしてしまいますので、「まぁ、あまり関係が近い人ではないから気にしないようにしよう」などという客観的な考え方ができなくなるのです。





これは、少しでも煙を探知するとスプリンクラーが作動して水が噴射されるようなもので、その煙がどの程度危ないものなのかということもきちんと評価できていませんし、いちいち水を噴射してそのあたりをめちゃくちゃにする以外の対応法があるのではないかということも検討できていない、という状態です。


そんな余裕はないのです!!


そんな様子は、周りから見れば、「なぜこの程度のことで?」と思えますし、「何もそこまで怒らなくても・・・」というふうに感じられます。


症例


A子さんは、職場で酷いパワーハラスメントを受けました。

怒鳴る上司の姿が何度も蘇ってきて身体が震えて固まってしまい、出勤できなくなってしまいました。

夫が聞いても酷い状況だったので、夫は、A子さんの職場に訴え出ました。

その結果、問題の上司は異動させられ、A子さんの職場環境は平和なものに戻りました。

心療内科で、「パワーハラスメントによる適応障害」という診断書をもらったA子さんは三カ月間の休職期間を許され、自宅でゆっくり過ごすことになりました。





これで、一件落着するだろうと、A子さんの夫は思っていました。

ところが、この休職期間の間に、夫婦関係はすっかり悪化してしまったのです。


例えば・・・

A子さんが、「休職期間が終わったら職場に戻れるか自信がないわ」と言ったときに、夫がA子さんを安心させるつもりで、「A子は女なんだから、無理して働かなくてもいいよ。僕が頑張るから」と言うと、A子さんの顔色が急に変わり、「あなたってそんなに保守的な人だったのね。見損なったわ」と怒ってしまったのです。


また、夫が食器を下げずにいると「こんなこともできないの」とA子さんがイライラした様子を見せることもありましたので、夫はA子さんが家事をやっていることに感謝を表現した方がよいのだろうと思い、A子さんの作った料理を「やっぱり時間をかけて作った料理は美味しいな」と言ったのですが、A子さんは、「酷いイヤミね・・耐えられないわ」と言ってリビングを出て行ってしまいました。

2人には小学生の娘が一人いましたが、夫と娘が楽しそうに話しているとA子さんは、イライラした様子で洗っている食器の音をガチャガチャと立てることもありました。

そんなA子さんの様子を気にした夫が、「お母さんが家にいて良かったな」と娘に言うと、A子さんはそのまま無言で自室にこもってしまいました。

夫からすれば、全て思いやりからやっているつもりのことを次々と否定されてしまい、すっかりA子という人が分からなくなってしまいました。

ある日、夫が「一体何が不満なんだ」とA子さんに聞くと、A子さんは、思いつめた顔で「私と別れてください」と言い、夫は突然のことに本当にビックリしてしまいました。




A子さんの夫は、「理不尽なことで上司に怒鳴られた」というトラウマ体験を理解していました。

それは夫から見ても気の毒な体験だったので、職場に訴え出たし、休職期間中もA子さんを優しく支えたつもりでした。

A子さんの全体的なイライラは、「まぁ、こんな時だからストレスが溜まっているのだろう」と理解するようにしていました。

それでも、よかれと思ったことがここまで裏目に出た挙句、離婚まで切り出されてしまったのですから、本当に驚いたのです。




心理カウンセリングしてみると



A子さんに話を聴いてみると、A子さんにとってのトラウマ体験はもう少し色彩の違うものでした。

もちろん上司が怒鳴ったことは怖かったのですが、それ以上に、問題の上司から「女はこれだから困る」と言われたことをA子さんはとても気にしていたのです。

そして、

上司から怒鳴られたくらいで具合が悪くなったのも、自分が女だからであって、男であれば受け流すことができたのではないか、と思って自分を責めていました。

そんなA子さんにとって「脅威のセンサー」は、主に、女である自分についてとやかく言われることに向けられました。

夫が「A子は女なんだから、無理して働かなくていいよ。僕が頑張るから」と言ったときには、それは「そもそも女が働いていたことが無理なんだ」と言われているように聞こえました。

また、「やっぱり時間をかけて作った料理は美味しいな」と言われたときには、今まで仕事にかまけて家事に時間をかけられなかった自分に対するイヤミだと思ったのです。

「お母さんが家にいてよかったな」と夫が娘に言ったときには、子どもの面倒もろくに見てこなかった自分を夫が責めていると感じました。

夫の発言の一つ一つのに「脅威のセンサー」が作動してしまったのです。

そして、A子さんはだんだん夫が信じられなくなり、「そう言えばこの人は昔から保守的だった」と思うようになり、自分が今後夫とやっていくことは無理だという気すらしてきたのです。

そんな時に夫から「一体何が不満なんだ」と言われたので、やはり自分が感じていた脅威は正しかったのだとA子さんは確信しました。

この人は、自分のことが不満で怒っているのだ、と分かったからです。

そして、A子さんは、離婚を切り出すことで夫という脅威から逃れようとしたのです。





最後に


A子さんの過敏さが「怒鳴る男性」などに向けられたのであれば、それがトラウマ症状だということが夫にも容易に理解できたでしょう。

しかし、

症状としての「対人過敏」は、本来のトラウマ体験とは直接関係のない、広い領域に及びます。

そして、

それを症状として認識することができないと、A子さん夫婦のように、もともと何の問題もないところが、離婚にまで追い詰められてしまうほどにもなるのです。


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